(いやいや……別に意識しなくていいんだよ。とにかくいつも通りに……)


平常心でいようとすればするほど、余計に身の置き場がなくなるような感覚に陥っていく。
このままだと、輝先輩が戻ってくる頃には挙動不審になりそうで……。彷徨わせた視線が捕らえた本棚を見ることにした。


本棚には、きちんと本が並んでいる。
一巻から順番に並んでいたり、同じ作者のマンガが隣同士に置かれていたりと、整頓されているのが一目でわかる。


彼は意外と几帳面なのか、本屋さんの書棚を思い出した。


「本棚はマンガばっかりなんだ」


輝先輩の本棚には、少年マンガがたくさん並んでいる。


「あ、これ、今流行ってるやつだ」

「読むなら貸すよ」

「わっ……!」


不意に背後から彼の声が聞こえて、反射的に肩を跳ねさせてしまう。
振り返ると、どこか楽しげな笑みを寄越されていた。


「人の部屋を観察するなんて、美波のエッチ」

「エッ……! 違っ……! そういうつもりじゃ……!」

「冗談だって。そんなにムキになるなよ」


ハハッと笑う輝先輩は、私の言葉なんて気にしていないようだった。


「そもそも、別に見られて困るようなものもないし」

「か、彼女とか……元カノの写真とかは?」


悔し紛れに言い放つと、彼がきょとんとしたあとで苦笑した。