(輝先輩の家に来ることになるなんて……)


突然の出来事に、まだ心が追いついてこない感じがする。
それでも、もう後戻りはできないと思うと、とにかく課題に集中するしかないと自分自身に言い聞かせた。


「意外とシンプルなんだ……」


部屋をぐるりと見回せば、モノトーンカラーで統一されていることがわかる。


ベッドのシーツや枕カバー、本棚は黒。
ラグはグレーだけれど、基本的に黒の方が多い。


輝先輩は金髪の印象が強い。だからなのか、もっと明るい色に囲まれているようなイメージだった。


(でも、部屋がカラフルっていうのは似合わない気がする……)


手持ち無沙汰のまま周囲を見ていると、ふと室内が彼の香りでいっぱいだということに気づいた。


輝先輩の部屋なのだから、それはきっと当たり前のこと。
だけど、一度意識してしまえば、思考が集中してしまう。


彼の匂いに包まれている気がして、妙にソワソワした。
しかも、つられたように緊張感が大きくなって、心臓が勝手にドキドキし始めた。