「そうだね。帰りは同じくらいの時間だし、会ってもおかしくないのに」

「ああ、それで言うと、俺は学校の近くでバイトしてるからな」

「そうなの?」

「駅の裏にある、『Sunset(サンセット)』って店、知ってる?」

「ううん」

「ハワイと海をモチーフにしたカフェなんだけど、メニューはどれもうまいから今度おいで。なんか奢ってやるよ」

「じゃあ、いっぱい食べる」

「こら。ちょっとは遠慮しろ」


彼と顔を見合わせ、クスクスと笑った。


輝先輩の家は、駅から徒歩八分ほどの場所にあった。


閑静な住宅街の一角。
すぐ傍には小さな公園があり、そこからセミの鳴き声が響いていた。


「どうぞ」

「お邪魔します……」

「俺の部屋、二階の一番奥なんだ」


彼は階段を上がり、私を部屋に案内してくれる。


「飲み物取ってくるから、ちょっと待ってて」

「あ、さっきのピーチティーがあるから……」

「外は暑かったし、冷えてる方がいいだろ? 麦茶でいい?」

「う、うん」


なんとなく落ち着かない私に反し、輝先輩は至っていつも通りだ。
彼は、私をひとり部屋に残して下に戻った。