「ミユ・ギャラガー、いえ、ミユ・ウインズレットです。あの、みなさんは気を遣って下さって『奥様』と呼んでくれていますが、じつは違うのです」

 イーサンにほんとうのことを言っておかないと。

「ええ。ですが、事情はどうあれ奥様は奥様ですから」

 そのとき、イーサンの童顔にやわらかい笑みが浮かんだ。

「何かお困りごとはございませんか? ああ、先程あなたを困らせておきながら、こういうことを尋ねるのもおかしいですね」

 彼は、緊張をほぐすかのようにおどけた。