ワオ!

 それって、まさしく小説の世界よね。

 ワクワクどきどきだわ。

 ちょっと待って、わたし。いまは、それどころではないわよね?

 この期に及んで自分で自分にツッコむ余裕があるのは、「何でも屋」で精神を鍛えられたからよね。

「後ろ手で扉を閉めろ」

 厨房に入りきったところでそう命じられ、おかしいと思った。

 もしも彼が泥棒や暗殺者だとしたら、みずから退路を断つことになる。それとも、仕事を余裕でこなせると思っているのかしら。