母は、その酒場の看板娘だったらしい。酒場の主人は、つまり姉とわたしにとって祖父にあたる人は、貴族というステイタスに目がくらんだ。貴族だったらなんでもいい。だから、酒代を払えずツケだらけの父に母を押し付けてしまった。

 そして、わたしたち姉妹が産まれた。

 生まれてからも家の状況はかわらなかった。それどころか、ますます悪くなった。

 平民の祖父は、早々に父を見限った。

 さいわい、屋敷の周囲の上位貴族たちは神様みたいな人たちだった。父と母には厳しかったけれど、姉とわたしによくしてくれた。各屋敷の使用人たちが、食事を運んでくれたり衣服や日用品などを恵んでくれたのだ。

 そのような神様のような隣人たちのお蔭で、姉とわたしは死なずにすんだといっても過言ではない。

 自分の父親のことを悪く言ってはバチがあたるでしょうけれど、父はバカで愚か者である。