父は、男性にしたら背があまり高くない。父方の祖先は遠い東の大陸からこの大陸に流れてきたらしい。小説や様々な文献によると、東の大陸には黒髪に黒い瞳の民族がいるらしい。

 遺伝子のイタズラか、あるいは神様の気まぐれか、とにかく黒い髪に黒い瞳はわたしだけ。だから、家族から疎まれるのも仕方のないことかもしれない。

 姉がわたしに意地悪をしたり暴力をふるったのも、この容姿のこともあった。

「ジリアン、寝坊してごめんなさい。あの、ジリアン。その奥様というのはやめてもらえないかしら?」
「ですが奥様。奥様は奥様ですので」

 昨夜もこのことで言い合いをして、いっこうに解決の糸口がみつからないでいる。

 奥様だなんて……。