「密書はないが、おれ自身が生きていては不都合だというわけだ。頼む。証言でもなんでもする。部下の命を助けて欲しい。こうなった以上、おれたちは祖国に戻ることは出来ない。すでに祖国には奴の手が回っていて、入国しだい引き渡されるか殺されるかする。部下たちには、すべてを捨て、他の国で生きてもらう。命さえあれば、どこででもなんとかなる」

 ジェロームの必死の訴えに、ブレントンが瞼を閉じて考え込んでいるのがわかる。

「わかった」
「ブレントン」
「閣下」

 ブレントンのいさぎよい返答に、ボスとイーサンがなにか言いかけた。

 が、なにも言わなかった。

 ボスもイーサンもブレントンにはブレントンなりの考えがあることを悟ったに違いない。

 王家主催のパーティーの夜は、とんでもなく刺激的な告白で終わりを迎えそうだった。