「おれは、自分の器をわかっているつもりだ。いまだっておまえやジリアン、叔父上やエドモンド兄弟、それからミホに支えてもらって、やっとのこと将軍職とウインズレット家を守っていられている。これ以上、無能なおれに出来ることはない。それにいまは、おれのところに来てくれたミユを守り、しあわせにすることで頭がいっぱいだ」
「閣下、あなたはご自身を過小評価しすぎなのです」

 イーサンは拗ねたようにつぶやくと、窓外に視線を移してしまった。

 それからしばらくの間、馬車内は居心地の悪い沈黙が続いた。

 なにか可笑しなことでも言って笑わせたい。そして、この空気をかえたい。

 そんな奇妙な衝動に駆られた瞬間、軽快に走っていた馬車が急停止した。