「それはそれは。公爵や将軍ともなると、つねにトラブルの一つや二つは抱えているものだ。かくいうわたしも……」
「そうだろうとも。公爵やましてや宰相ともなると、つねにトラブルの一つや二つは起こしているものだ」

 宰相の言葉をさえぎり、ボスが言い放った。

 ピリピリとした空気に包まれ、だれもが緊張している。

 わたしも、握りしめている拳が汗ばんでいることに気がついた。

「そういえば、ブレントンは『美姫』と名高いギャラガー男爵家の令嬢を妻に迎えたとか?」

 突然、宰相は話題をかえた。

 よくいるのよね。自分に不利になると、話題をかえたり打ち切ったりする人って。