それにしても、ボスのことで驚くのは飽きたわ。

 というか、胡散臭い話が次から次へと出てきてイヤになってくる。

「イーサンとは、いっしょに育てられた幼馴染、というよりかは兄妹みたいなものなのです。今夜は、奥様をお守りする為にパートナーのふりをしているだけです」
「ふんっ! 幼馴染や兄妹なら、もっと大切にしてほしいし、尊敬とか立てるとかしてほしいよ」

 そのとき、イーサンが彼女とは反対の窓の方を向いてつぶやいた。

「奥様、弱い犬ほどよく吠えますわよね?」

 ジリアンは、そう言って微笑んだ。

 彼女のきれいな手は、イーサンの二の腕を握っている。