「ブレントン、どうする? おまえはいま、ジェローム帝国だけでなく味方からも狙われていることになるぞ」
「ええ、叔父上。承知しています。ですが、もともと味方はおりません。すくなくとも、この王都の貴族や政治家の中には……」

 ブレントンは、ボスから手紙を受け取ると小さく溜め息をついた。

「これは、証拠にはなりえません。宰相の名が記され、オールポート公爵家の紋章が刻印されていてもです。たとえおれの殺害を依頼する内容だとしても、いくらでも言い逃れは出来ますから」

 そう。この手紙の差出人は、このファース王国の宰相アンディ・オールポートなのである。

 オールポート公爵家は、この王国の公爵三家の筆頭。武門のウインズレット公爵家とはライバル的存在にあたる。

 そのアンディが、ウインズレット公爵の殺害をジェロームに依頼したのだ。

 政治的にも大変な事案に発展してしまった。