「公爵閣下、申し訳ありません。ホッとしたら、途端にお腹が減ってきて……」
「おれに対して謝罪はいらない。おれも腹が減っているし、それから寒い。はやく屋敷へ帰ろう」
「はい。屋敷に帰りましょう」

 その瞬間、彼がわたしを抱きかかえた。

「ほら、こうすればあたたかいだろう?」

 彼は、わたしをお姫様抱っこしたまま有無を言わさず大股に歩き始めた。

 恥ずかしすぎるけれど、どこかうれしい気持ちもある。

 そうよね。甘えたっていいわよね。いまここには人っ子一人いないし、だれかに見られることもないでしょうから。