「こ、公爵閣下、おやめください。いったい、どういう内容のことですか?」
「最初だよ。きみと顔を合わせたばかりの頃のことだ」
「ああ、『亡くなったクラリスしか愛せない。だから、きみを愛するつもりはない。『お飾り妻』でいればいい』。そんな内容のことでしたよね?」
「くそっ! おっと失礼。ちゃんと覚えているのだな?」
「当然です。あのようなひどい内容、たとえわたしが神であっても、きくに堪えませんでしたから」
「……。だ、だろうな。とにかく、あのときのおれは、きみに会えたことがうれしすぎて舞い上がっていたんだ。が、おれのうれしさとは裏腹に、きみはギャラガー男爵家の借金の為に嫌々嫁いできた。しかも、おれの噂をきいておれにたいして嫌悪感を抱いているだろうと勝手に思い込んでいた。だから、ちょっと意地悪をしたくなったのかもしれない」