はやい。

 もう一度飛び退る暇はない。

 彼の右手がわたしのコートに触れそうになった。

「ミユッ!」

 その瞬間、だれかにひっぱられた。そう認識したときには、なにか大きなものに包まれていた。

「ギャッ!」

 目の前では、ジェロームが尻尾を踏まれた猫のような悲鳴とともに宙を舞っている。

「ガフッ!」
「ギャアッ」
「グフッ」

 そして、いくつかの悲鳴が耳に飛び込んできた。