とにかく、ひたすら足を動かした。そう長くない人生の中で、これほど両足を速く動かしたことはない。そう断言出来るほど動かし続けた。

 階段を一段ずつ飛び抜かし、段や茂みを飛び越え、柵や塀をよじ登り、とにかくありとあらゆる道を進んだ。もちろん、道以外のところも。

 障害物をものともしない。ちんちくりんだからこそ、身が軽い。どんなものでも乗り越え、無理矢理通り抜け、通りすぎる。

 ダメだわ。あいつら、まだついてくる。

 努力も虚しく、何者かたちはまだ追ってきている。

 もしかすると、振り切ることが出来ないかもしれない。

 だんだん焦ってきた。 

 大丈夫。まだ息は切れないはず。だけど、(それ)も永遠に続くわけではない。最近、司書の仕事で図書館にこもっていることが多かったから、「何でも屋」にいたときのように体を動かしていない。

 体がなまってしまっている。

 ちょっと待って。