さて、と。そろそろ西街区から出てもいいわね。

 そうだ。南街区に戻る前に、北街区にある王立公園に行ってみようかしら。

 その方が無難よね。

 というわけで、足を北街区へと向けた。

 北街区へ方向をかえてしばらく歩いていると、うなじの辺りがザワザワしてきた。

 これは、「何でも屋」時代に何度も体験した、いうなれば前兆。嫌なことが起こるであろう合図である。

 その瞬間、はっきりと感じた。

 尾行されている、と。いいえ。尾行ではないわね。何者かが、はっきりそうとわかるほど堂々とついてきている。

 しかも複数人いる。

 もしかして、ずっと前からついてきているの? 
 こういうことってほんとうに久しぶりだから、勘が鈍っているのかしら。

 はやい話が、まったく気がついていなかったわ。

 情けないかぎりね。

 まっすぐウインスタッド公爵邸に戻らなくって、ほんとうによかった。

 それにしても、いったいだれがついてきているのかしら?

 ダメダメ。呑気に推察している場合ではないわ。

 とにかく、うしろの連中をどうにかしなければ。