そのあとも涙は止まらなかった。

 公爵はわたしが「レディ・ローズ」を受け取ることをよろこびながらも、ずっと気遣ってくれた。そして、イーサンはその公爵をずっと揶揄っていた。

 気持ちが落ち着くと、ようやく涙が止まった。

 涙が止まったタイミングで、料理長のリチャードが呼びに来てくれた。

 このカントリー風の建物は、レストランだった。とはいえ、王都の南街区にあるような上流貴族御用達の気取ったレストランではない。庶民向けで、軍で提供される豪快なレシピが売りらしい。

 実際、このときの昼食のメニューは、数種類の脂たっぷりの肉の塊や野菜や魚介類を炭火で豪快に焼いたものを、特製のソースにつけて食べるというワイルドなメニューだった。

 それらの食材を、口のまわりや両手をソースや脂でギトギトにさせつつ食べ尽くした。

 マナーを気にせず、気取らず、ただただ楽しんで食べたこの料理は、美味しすぎた。なにより楽しすぎた。

 食べること、だけではない。公爵とイーサンと三人でワイワイ騒いで食べたのが、ほんとうに楽しかった。

「何でも屋」でボスやエドモンド兄弟とワイワイ食事をするのに似ている。

 食べること、騒ぐこと、どちらも堪能した。