つい先程、リチャードが「大佐も『レディ』を連れて」って言っていたっけ。

 大佐というのは、イーサンに違いない。

 やはり、公爵のあたらしい奥様のことなのね。

 このままここを去りたい気持ちでいっぱいである。だけど、受け入れないとという気持ちもある。

 しょせんわたしは「お飾り妻」なのですもの。そもそも公爵の側にいることじたい分不相応だわ。

 小さく深呼吸をし、いまから立ち向かう試練に気持ちを奮い立たせようとした。

 だけど、出来なかった。

 溜息をついてしまった。それから、慌てて彼の背を追いかけた。