「グルルルル」

 そのとき、馬車内にお腹の虫が騒ぐ音が響き渡った。

 嘘……。

「何でも屋」の事務所であれだけパンを食べたのに? まさかもうお腹が減ったの?

 自分で自分が信じられない。

「ククククク」

 そのとき、公爵が手で口を覆いながら小さく笑い始めた。

 ガマン出来ずに笑ってしまったという感じである。

「きみの腹の虫は正直だな」
「も、申し訳ありません」

 こじんまりしている体をどこかに隠してしまいたい。

「謝罪は必要ない。おれこそ、こんなところまで付き合わせてすまない。もう到着だ。腹ごしらえが出来る。ほら」

 彼は、窓外に銀仮面を向けた。

 その視線を追うと、牧場のような草原の中にカントリー調の立派な木造建築が見えてきた。