「うわあっ! 公爵閣下、サイネリアですね。きれいだわ」

 彼との会話の途中、視界の隅に青紫色の絨毯が映った。そちらへ視線を向けると、左側にサイネリアの花が永遠と思えるほど広がっている。

 冬がやって来る直前の穏やかな日、青紫色の絨毯は陽光に照らしだされてキラキラ光っている。

「すでにこの辺りはファース王国軍の駐屯地だ。このサイネリア畑は、民間人に開放している。他国からも見物に来るほど有名なのだ」
「すみません。王都で生まれ育っているはずなのに、まったく知りませんでした」
「いや、気にするな。だれもかれもが知っているわけではないからな。屋台が出ていたり大道芸が行われていて、けっこう賑わうのだ」
「楽しそうですね。きれいなサイネリア畑を見ながら、美味しいものを食べる。最高です」

 脳内でその光景を思い浮かべてみた。

 屋台ってどんな屋台なのかしら?

 スイーツや果物や揚げパンやサンドイッチやロースト肉やパスタ……。