それが、「お飾り妻」として出来ることよ。

 でも……。

「ああ、もちろん、きみの用事が優先だから……」
「参ります。わたしの用事は、急ぎでもなんでもありません」

 公爵が言いかけたところにかぶせ、そう答えていた。

 ほんとうは彼の話などききたくないし、そんなレディにだって会いたくない。

 このまま図書館に逃げ込み、しばらく彼に会いたくない。

 だけど、ここで逃げるわけにはいかない。

 彼の為にも……。

「よかった。ありがとう。それでは、さっそく行こう」

 公爵は手を差し出すとわたしの手を取り、馬車に乗るのをエスコートしてくれた。

 豪華な馬車は、静かに走りだす。

 窓外に流れる景色を見ながら、動揺と混乱と不安をおさえるのに必死にならなければならなかった。