「はい? どうしてそれを……?」

 尋ねた自分がバカだった。

 今朝、屋敷の人たちに「今日は街の王立図書館に行く」ということを宣言したのだった。

 モーリスが告げたに違いない。

「公爵閣下。ですが、北街区に行ってからでは、って、送っていただくのはとてもうれしいのですが、遠まわりどころかまったく反対の場所に行くことになります。それから王宮に向かいますと、朝食会に間に合わないのではないでしょうか?」
「かまうものか」
「はい?」
「朝食会など、文官どもがくだらぬことをさえずるお喋り会だ。おれにとっては、いわば忍耐力と精神力の修練の場にすぎん。連中にとっては、おれは異物に等しい。ゆえにおれが遅れようが欠席しようが、連中は意に介さん」
「はぁ……」

 としか反応のしようがなかった。