王立図書館は大きい。広すぎる。その蔵書の数は、じつに何万冊にも及ぶ。

 本好きにとっては、まさしく聖地。

 一日どころか、十日いても飽き足らない。

 だから、そういう言い訳は有効なわけである。

 姉の相手の男性を捜すとなると、もしかすると夜の街を飛び回らなければならないかもしれない。

 そうなると、屋敷に戻ってくるのが遅くなってしまう。

 夕食も必要ない、と伝えることも忘れない。

 そして、屋敷を出ようとした。

 玄関前にウインズレット公爵家の立派な馬車が停まっている。

 扉を開けたその馬車の側で、イーサンと雑用係のロバートが姿勢を正して立っている。

 ああ、そうだったわね。

 王宮に行く公爵を待っているのだわ。

 立派な樫材の玄関扉を通りながら、彼らに挨拶をした。それから、「またね」と言いつつ側を通りすぎようとした。