「ガコンッ」

自販機から出てきたコーヒーは少し温かくて冷えきった手をじんわりと暖める。

朝の日差しが病棟の廊下を照らしまるで、こっちに来てと言われているようだった。

足が自然と光の方へ進んでいく。

まるで心と体が別々になったような気分だった。

ある病室の前で光が止まった。

体が勝手に病室のドアに手をかける。

ドアが開けられたと同時にある光景が俺の視線を奪った。

少女は窓のそばに立って朝日を浴びていたんだ。

そしてゆっくりとこちらを振り返り「蓮、、」と言った。

俺の名前を呼んでいた。

知らない少女なのに胸が苦しくて悲しくて泣きそうだった。

「なんで、、俺の名前、、、知って、、」

やっと口にできた言葉は途切れ途切れだった。

急に周りがぼやけ始め消えていく。

少女は笑って光と共に消えていった。