「確かに、まだなにも聞いてないけど、見りゃ分かるって。お前って、恋愛とか無縁そうだよな。男っ気ないし」

 敦は、面白いおもちゃでも手に入れたかのように、ケラケラ笑って話した。

「そっちこそ、彼女の『か』の字も見当たらないね」

 今日は、こんなことを言いたいわけじゃない。こういう会話のテンポになるといつも、私たちは次第に、口喧嘩に発展してしまう。

「あぁ、見当たらないよ。今日も去年と同じで、先輩や同級生からいくつもチョコもらったけど、彼女にしたいような人なんて見当たらなかったよ……」

「……っ」

 いつもなら、もっと斜め上をいく感じで言い返してくるのに、今日はそんないつもの感じではなかった。

 ……でも、やっぱりいくつももらったんだ……チョコ。
 モテるもんね、敦。そりゃ、貰うか。貰うよね。

 私は何て言葉を返したらいいのか、分からなかった。
 それこそ、いつもなら冗談で適当に言葉を返すのに。その冗談さえ、今は言えなくて……。

「……何か言えよ。今みたいな話、いつもなら即ツッコんでくるだろ、お前」

「そう、だね……。ははっ、ごめん、ごめん」

「何だそれ……」

「何か今日はそういう気分じゃないっていうか」

「どんな気分だよ」