「敦、今年もいっぱい貰ったの?」

「…………」

 あれ? 聞こえなかった? そんな小さな声で話したつもりはなかったんだけど。

「敦……?」

「なに?」

「いや、私の話聞いてた?」

「さぁ?」

 今の返事こそ、「なに?」だよ。ほんと。
 絶対、聞こえてたよね? 今の返事の感じだと。

 何か都合悪いことでも聞いてしまったかな? なんて思ってると、敦が口を開いた。

「お前は?」

「なにが?」

「今年は誰かに渡した?」

「えっ」

 何だ……聞こえてんじゃん。さっきの質問。
 自分は言いたくないけど、私のは聞くんだ? それって、ズルくない!?

「敦が答えてくれたら……答えてもいいよ?」

「なに、その思わせぶりな言い方。どうせ、今年も誰にも渡してないんだろ?」

「なっ……! まだなにも言ってないでしょ!」

 こんな言い方じゃ、誰にも渡してないって言ってるのと同じだ。


 話しながら校門を出ると、いつもみたいに、敦が道路側を歩いてくれた。
 ほんと、こういう些細なところも敦らしいというか、何というか。