――京極(きょうごく)のつくった肉じゃがなら、毎日食べたい。
俺の嫁にならない? 大事にするし、尽くすよ?



でろんでろんに酔っぱらった藤井(ふじい)くんは、そう言って京極くんにキスをした。

それはわりとしっかりとしたもので、音にするならば「ぶちゅっ」というレベルの濃厚なものだった。


みんなから「真面目という言葉を具現化したような奴」と揶揄される京極くんは、ひややかに「時代錯誤な台詞(セリフ)だな」と言い放ち、唇の皮がめくれそうなくらい紙ナフキンで唇を拭った。

みんながけらけらと笑うなか、わたしはぬるくなったビールジョッキを握りしめ、なるほど。その手でいけばいいのか、と胸を震わせた。



胃袋は、いちばんの急所なのかもしれない。