「ごめんね、いつもいつも」

「いや、別に」

「すぐに帰るから。ごめんね、暗くてパソコン打ちづらかったよね」

急いで帰り支度をしていると、京極くんはなぜかジャケットを羽織り、キーケースを手にした。

「……京極くん、買い物でも行くの?」

静かに(うなづ)いた京極くんの眼鏡のフレームが揺れる。

私を送ってくれるつもりなのかと思ったけれど、自意識過剰な気がして、訊いたりはしなかった。



駅までの道のりは、ほとんどわたしが一方的にしゃべった。
京極くんはどんなにくだらない話にも必ず相槌を打ち、わたしに合わせて歩幅を縮めてくれた。

窮屈そうな長い脚。
こっそり笑うと、「なに?」と訊かれた。

「ううん。なんでもない」


少し前までは接点のなかった、京極くんとわたし。

つながった点と点のあいだの線は、じょじょに、じょじょに、色濃くなっているような気がする。