「はい、いっぱい食べな」
手渡された焼きそばは、作りたてでまだ温かい。
その温もりを感じながらうなずき、少し口に含んだ。
「……うまい」
「でしょ? さっき食べて美味しかったから、沢内にも買ってあげようと思って」
「え、糸原さっき食べたのかよ……?!」
「うん。てことでその大盛り焼きそばは沢内にぜんぶあげるよ」
「だいぶしんどいんだけど……?!」
なんだよそれ!と言いながら、やけになって焼きそばを詰め込む。
美味しいはずなのに、ズキズキ痛む心のせいで少し苦い味がした。
そんな俺の様子を黙って見ていた糸原は、前を向き直って言った。
「沢内もバカだよね。どうせ、みゆうにかっこつけて『俺はいいから行ってこい』的なこと言ったんでしょ」