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あー……、行ってしまった。


がやがやとうるさい教室で、ひとりため息をつく。



好きな女の子が、ほかの男に連れられて去っていくところを見るのはかなり辛い。


さっきはかっこつけて『行ってこい』なんて言ったけれど、心はずっとしんどいままだ。



保志の姿が見えなくなったあと、着ぐるみで見えないことを良いことに、柄にもなく涙が出てきてしまった。


……シフト、戻らないと。



ぼーっとする頭で、俺は自分の持ち場に戻る。


さっきまで阿久間がいたおかげで、女性客がその話題で持ちきりだ。


こっちはすごーく心労にやられそうだというのに、ひとりになることもできない。