遅れたら大変と言った折原さんの瞳は、真剣そのものだったので、今は折原さんの指示に従って着替えを済ませ、先ほどの人達も同じ制服に着替え終わっていたので一緒に部屋を出て、またエレベーターに乗り、四階で降りた。
それにしても、この人達は着こなしといい、本当にフライトアテンダントの制服がよく似合っている。エレベーターに乗っている時、まじまじと見ながらそう感じていた。それに比べて私は、まったく似合っていない。ブラウスの袖丈も長くて、手の半分ぐらいが隠れてしまっている。
「矢島さん。こっち」
「は、はい」
何とも様になっていない、長い両袖から半分ぐらいしか出ていない左右の手を見ながら溜息をついていると、少し後れを取ってしまった私を振り返った折原さんが手招きをした。そして急いで追いついて通路を曲がった先の突き当たりには、両開きのガラス張りの扉があり、そこには小児病棟と書かれていた。
小児病棟?
近づいていくと扉は施錠されており、一番前を歩いていた人がその施錠を解除して中に入り、最後に私が入ると折原さんがまた扉の施錠をした。
「矢島さん。手を消毒して」
「はい」
小児病棟に入って直ぐのところにスプレー式の消毒液が置いてあり、手を消毒した後、隣に置いてたったティッシュで手を拭いていると、後ろから人影が見えて、振り返ると高橋さんが立っていた。
「矢島さん。なかなか似合ってるな」
「そ、そんなことないです」
「本当よね。私もそう思った」
「折原さんまで、やめて下さい」
心底、そう思っていた。他の人は背も高いし、ビシッと制服姿が決まっていたが、私のこの身長では、制服に着られているといった感じだ。
あれ?
高橋さんを見ると、先ほどの私服からスーツに着替えている。しかも、会社のマークの入っているジャケットを羽織っていて、ワイシャツも恐らく男子の制服のものだと思う。
高橋さんまで着替えているなんて、これからいったい何が始まるのだろう?
「それじゃ、矢島さん。矢島さんは折原と俺の指示に従って動いてくれればいいから」
「はい……。あの……」
「高橋さん。準備お願いします」
「はい。今、行きます」
折原さんと高橋さんの指示に従ってと言われても、実際、これから何をすればいいのかもわからないのに……。呼ばれて行ってしまった高橋さんの背中を見つめながら、心の中で呟いていた。
「矢島さん。私達も行くわよ」
「あっ、はい」
折原さんが立ち止まった部屋は硝子張りになっていて、扉にはプレイルームと書いてあった。
「矢島さん」
「はい」
振り返った折原さんの表情はとても真剣で、先ほどとは別人のようだ。
「今から部屋に入るけれど、いろんな意味で、とにかく笑顔を忘れないでね」
「はい。あの、折原さん。私はどうすれば……。何をすればいいのでしょうか?」
「矢島さんは、この部屋の中に入って楽しんでくれればいいから」
楽しむ?