高校卒業以来、家を出ることも働くことも認められず、奴隷のように家事をさせられ続けている。

 高校三年の頃に就職先を探していたら、勝手に履歴書を処分されてしまった。彼らは面倒事を任せられる人間を、ずっと家に置いておきたいらしい。

 しかし、家にいながらできることもあると考えて、私は家庭菜園を始めた。鮫島家が持て余していた庭で育てた数種類の野菜を、定期的にファーマーズマーケットで販売しているのだ。

 もちろん自分たちの食卓にも並べている。叔父たちにとっても損はないので、幸いなことに反対はされていない。

 それで稼げる収入は微々たるものだけれど、これまでこつこつ貯めてきたし、両親が残したお金もまだある。いつかひとりで生活できるくらいのお金を貯めて、鮫島家を出る。それが私の今の目標だ。

 とはいえ、簡単には実行できそうにないのだが。案の定、叔父が〝くだらない〟と言うように片方の眉をぴくりと上げる。

「家を出る? ひとり暮らしは認めないと言っただろう。それとも、結婚する予定でもあるのか?」
「深春ちゃんに結婚できる相手なんていないでしょう。寄ってくるのは野良猫ぐらいで、男っ気なんて全然ないもん」