「フルコース三万円を四人分払えるならな。かれこれ十年も面倒見てやってるんだから、これくらい出してもらわなきゃ」
「そうねぇ。本当の家族じゃないのに苦労させられているんだもの」

 やはりいい意味ではなかったようで、叔母も心ない言葉を続け、狭い車内に三人の悪魔のような笑い声が響いた。

 叔父たちは後見人ではあっても養子縁組をしていないから、確かに正確には家族ではないかもしれない。それはおそらく、鮫島家の財産を私に譲りたくないからだろう。叔父様、叔母様と〝様〟をつけて呼ばされているのも、一線を引かれていると感じる。

 なぜこんな扱いを受けているのかというと、根本の原因は両親にある。

 本来なら叔父の兄にあたる私の父が、祖父の町工場を継ぐはずだった。しかし、私を生んだ母は都会暮らしのストレスもあって産後うつになってしまい、一家で田舎へ引っ越したのだ。

 父はとても申し訳なく思っていたのだが、無理やり跡を継がされた叔父にしてみれば、父に対しての恨みは相当だったのだろう。

 両親が亡くなって私の後見人にならざるを得なくなると、その恨みが私に対して向けられるようになった。