星羅は食後でも潤っている桃色の口元に、わざとらしく片手を当てる。

「あっ、勘違いしないでね! どっちかと言えば綺麗系ってことよ。黒くてまっすぐな長い髪は味つけ海苔みたいだし、田舎っぽい顔もメイクすればちょっとはマシになりそうだし」

 よくまあそんなに嫌みが出てくるなと、今ではイラ立ちを通り越して感心するほどだ。

 確かに私はストレートロングの黒髪で、目は二重だとはいえアイドルのようにぱっちりしているわけではないし、平凡であか抜けない顔だけれど。

 こういう時は相手にせず、こちらも軽い嫌みで返すようにしている。にこりと微笑んで「綺麗だなんてありがとう」と言うと、星羅は面白くなさそうな仏頂面になってそっぽを向いた。

 その時、ミラー越しに私を見る恰幅のいい叔父が口を開く。

「今度、深春も一緒に行くか?」
「えっ」

 意外すぎるひと言が投げかけられ、思わずブレーキを踏んでしまいそうになるほど驚いた。この人に高級レストランどころか普通の食事にすら連れて行ってもらったことなんて、一度もないのだから。

 なにか裏があるのでは、とすぐに疑う私に気づいているのかいないのか、彼は意地悪く片方の口角を上げる。