「そんな無情な人たちと、なぜずっと一緒にいる? 脅されたり、暴力で押さえつけられたりしていないだろうな」
「暴力なんて! 一度もありませんよ」
「じゃあ、罵られたりはしていないか? それも立派な言葉の暴力だぞ」

 きっぱりと言い放たれ、私は口をつぐむ。

 学生時代は先生に何度か相談した。でも、叔父たちは当然外面をよくしているので取り合ってもらえなくて、逆に『余計なことを言うな』と怒られるだけ。

 ご飯を与えられていないわけでもなかったし、学費などもちゃんと払ってもらっていたから、私が我慢すればいいだけだろうと思い、誰かに助けを求めるのはやめた。友達に話を聞いてもらって、慰めてもらうだけで十分だった。

 いつしか、この生活が私にとっての普通になっていて、家政婦のように扱われるのにも疑問を抱かなくなっている。

「……仕方ないんです。私は歓迎されていない厄介者だから。罵られるのにも、もう慣れてしまいました」
「そんなのに慣れる必要はない。許せないなら怒っていいんだ」
「そうしたところで、なにも変わらないので」

 無理に口角を上げるのはやめ、空虚な瞳で視線を宙に向ける。そんな私を、黒凪さんは憐れむでもなくただまっすぐ見つめ、小さく息を吐き出す。