和やかに話し始める皆から顔を背け、私は絶望感を抱いてその場を去ろうとした。が、自分の部屋に戻ってじっとしていても、むしゃくしゃしてくるだけなのはわかっている。

 いろいろどうでもよくなった時、私がするのは野菜のヤケ食いだ。冷蔵庫からもろみ味噌を取り出して玄関から庭へ回り、まだ若干若いきゅうりをもぎ取った。

 真夏の照りつける太陽から逃れられる屋根つきのウッドデッキに座り、洗ったきゅうりにもろみ味噌をつけて丸かじりする。

 暑さでじわじわと汗が滲み出てくるのに、心は驚くほど冷えている。今回のことはさすがに許せない……。ヤケ食いで治まるだろうか。

 立派に育っている野菜の葉をぼんやり眺めながら、もろきゅうをボリボリと貪ってどのくらい経ったのか、足音が近づいてくるのに気づいてはっとする。

 ぱっと振り向くと、なぜか黒凪さんがこちらへ向かってくるところだった。すらりとした長身でモデルのように歩く彼を、私はぽかんとして見上げる。

「黒凪さん……?」
「外観と庭を見せてもらいに来た。鮫島さんたちには中で待ってもらっている」

 彼はそう言い、あろうことか隣にきて「座ってもいいか?」と問う。私はごくんときゅうりを飲み込んで頷いた。