衝撃を受けてただ唖然とする。もちろん黒凪さんも信じられないらしく、凛々しい眉をひそめている。

「そんなはずがないだろう。君は鮫島さんの娘ではないのか」
「私は姪です。一緒に暮らしているんですが……家族とは思われていないので」

 表情は強張り、声はどんどん暗くなっていく。初対面の人に話す内容ではないと思いながらも、つい口からこぼれてしまっていた。

 ショックでなにも言えなくなる私を、黒凪さんは事情を察したのか険しい顔で見つめている。その時、庭のほうから誰かの足音が聞こえてきた。

「深春!」

 名前を呼ぶ、やや怒気を含んだ声は叔父のものだ。反射的に背筋を伸ばし、「はい!」と返事をして振り向く。

「いつまで庭弄りをしているんだ。さっさと中に──」

 不機嫌そうにやってきた彼は、門の外側に黒凪さんがいるのに気づいてはっとした。そして、瞬時に人当たりのいい笑顔に変わる。

「ああ、黒凪社長! いらしていたんですか」
「すみません、少し早く来てしまって」
「そうでしたか。どうぞお入りください」

 すぐにこちらへやってきた叔父は、私を押し退けるようにして門を開け、低姿勢で黒凪さんを中へ促した。