叔母と星羅は、来客用のお茶菓子を買いに人気の洋菓子店へ向かっていった。普段は私が買いに行かされるのに珍しいなと思いつつ、抜いた雑草をゴミ袋に詰めていく。

 お客様が来る時間の午前十時が近づいてきたので、そろそろ終わりにする。すでに気温は三十度を超えていてかなり暑く、顔回りに滲む汗を手の甲で拭った。

 だいぶすっきりしたなと、しゃがんだまま辺りを見回した時、門の向こうにひとりの男性がいるのに気づく。例のお客様だろうかと、そっと様子を窺う。

 ブルーのネクタイとスーツベストを身につけ、ワイシャツを腕まくりしているビジネスマン。身長は百八十センチほどあるんじゃないだろうか。すらりとスタイルがよく、長めの前髪が自然に流された髪型はなんだか色気を感じる。

 そしてなにより、顔がいい。凛々しい眉も切れ長の瞳も、高い鼻も薄めの唇も。男性らしいのに美しい、創作の世界から抜け出してきたのではと錯覚するほど容姿端麗な人だ。

 ところが、彼は周辺を確認するように見回したり、私たちの家を見てなにかメモをとったりしている。あんなイケメンさんが、なにやら不審な動きを……?

 妙だなと思い様子を窺っていると、今度は私たちの家にスマホを向けて写真を撮り始めた。ギョッとした私は慌てて立ち上がり、小走りで門へ向かう。