時田に渡された台本を読む。
………まるで自分みたいな主人公。
どうしようか、
いろいろ大変だろうし、演じることができるのか…。
「はぁ、」
「なーにため息ついてんの?」
振り返ると俺の兄貴である俳優の[千村 流]がいた。
「なに、おまえ映画でるの?」
目を見開き驚く兄貴。
そりゃそうだ、
散々俳優の兄貴を嫌ってたやつが台本持ってんだから。
「…やるかはまだ決めてないから。」
立ち上がり自室に向かう。
背中から聞こえた、
「俺とか母さんとか、周り気にしないで自分がやりたいことしろよ。」
悔しくて情けなくてイヤになる。
どんなに嫌っても心の底からは嫌えない。
大事だからイヤなんだ。
辛い思いしてほしくないんだ。
自分がやりたいことは決まってる、
ただ単にきっかけがなかっただけだった。