「ま、宮本のよだれとかついたぬいぐるみなんていらねーよなー」


コウタくんがけらけらと笑った。


「えー、理玖くんファンならお金出しても欲しがるかもよ? ねえ、真緒」


「……えっ!?」


ふいに背中に声がかかる。
うろたえたあたしに、結衣が笑顔を向けていた。

先生が振り返って、あたしを見た。
笑っていない瞳には、どんな顔をしたあたしが映ってるだろう。

どうしていいか分からなくて、俯こうとしたとき、理玖の視線を感じた。


……ダメだ。
あたしの態度が、おかしいと思われたら、理玖を困らせてしまうかもしれない。
理玖が困るようなことはしない。
してはいけない。


「……あ、はは。そうかもしれないねー。でも、子どもの時にぬいぐるみなんて持ってるところ、一度も見たことないし」


笑って、結衣を見た。


「だよねー。理玖くんにぬいぐるみは似合わないかもっ」


結衣があははっと笑って答える。


「……残念。宮本を動揺させて勝つつもりだったんだけどな」


くすり、と先生が笑って呟いた。