ドアを閉めて、足を玲奈の病室へと向けた。

情けない。
優柔不断で、流されてきた自分に怒りが沸く。


俺は玲奈を突き放していたらよかったのか。
傷だらけで泣く姿から、視線を逸らしていたら。
一人で震える玲奈を拒絶していたら。



そしたら、玲奈はどうなっていただろう?
玲奈を心底大切にできる男に出会えただろうか。
俺のことなんてあっさり忘れさせるような男に。


なんて。
今更そんな勝手なことを思うなんて、馬鹿だ。


俺は玲奈に応えてしまったし、玲奈は俺に命を賭けてしまった。
背中の傷よりもっと深い傷を与えてしまった俺は、一生それを償っていかなくてはいけない。

真緒への気持ちは殺さなくてはいけない。



――――殺す


真緒のお腹に宿った子供のことを思う。
きっと、俺にとって最初で最後の子供。
その子供を殺すことは、そのまま俺の想いを殺すことなんだ。


育つ命は、父親に死を宣告されたことを聞いていただろうか。
愚かな父に悪戯に命を与えられ、奪われることを恨むだろう。