「買われた? どういう……」


「俺の家の会社は、久世グループから多額の援助を受けてる。そういうコトだよ」


真緒から片桐に視線を戻した。


「……他の女を選んだ男の子供なんて、産みたくないよな。
何より、真緒にはもっと幸せな人生を歩んで欲しい。

中絶……の金は用意するよ。
あんたから、真緒に渡してくれないか」


「それで、お前はいいのか」


「いいも悪いも、こうするしか道はないんだ。
本当は、真緒とちゃんと向き合って話したい、謝りたいけど。
でも、どうせ泣かせてしまうのなら、会わないほうがいいのかもしれない」


最後にもう一度、真緒の顔を見た。
きっと、まともに顔が見られるのはこれが最後だから。


幸せに笑う日が、少しでも早く来ればいい。
傷しかつけなかった俺のことなんて、忘れてしまえる日が一日でも早く。


「宮本、お前」


「じゃ、行くよ。
真緒を、頼むな」


何かを断ち切るように言い捨てて、病室を後にした。