「入れて」


ひょいと窓から入ってきた理玖は、いきなりあたしを抱き寄せてきた。
無理やり顔を上に向けられ、唇を重ねる。
乱暴に押し入ってくる舌。


「ん……。理、玖、ちょ……、待って」


リビングからは、両親が見ているテレビの音が微かに聞こえる。
理玖が入ってきた窓も、カーテンをはためかせたまま。

抱きしめられた腕の中で、体を離そうとするけれど、理玖の腕に込められた力は緩まなかった。


「理……。ふぁ……」


「……片桐と、何かあんの?」


唇が微かに離れ、吐息まじりに理玖が呟いた。


「……理、玖」


「あいつの真緒を見る目、先生が生徒を見る目じゃなかった」


ものすごく近くにある理玖の瞳は静かな怒りを湛えていた。


「片桐と、何かあんの?」


「……何も、ない。何もないよ」


抱きしめる腕に益々力が入り、それに苦しさを感じながら、答えた。


「本当に?」


「ホント……だよ」


こくりと頷いて答えながら、思った。

あたしは、頭がおかしいのかもしれない。