誰もいない茶道室の、畳の隅にぺたりと座り込んだ。

ため息をついて、色褪せたい草を指先でなぞる。


慌ててあの場を離れたけれど、よかったのかな。

あそこには玲奈さんもいたのに、変に思われはしなかっただろうか。


「って、気にしすぎ、かな……」


理玖とあたしの関係は、この半年間誰も知られることがなかった。

夜中の僅かな時間しか一緒に過ごさず、昼間は全く関わりを持たなかったんだから、当たり前かもしれないけれど。

……ううん。
でも、あたしのミスとは言え、片桐先生に知られてしまった。
さっきのようなことを再び片桐先生がしたら、これからもするのなら、周りに気付かれないとも限らない。


どうしたらいいんだろう。


もし、玲奈さんに気付かれるようなことになれば、あたしと理玖の関係は終わってしまう。

理玖のそばにいられなくなる。


理玖はどう思っただろう?
秘密が公になるかもしれない、と別れを考えたりしないよね?
そばにいてくれるよね?


不安に押しつぶされそうで、たまらずにうずくまった。
楽しそうな文化祭のざわめきが、どこか遠くに感じられた。