『似合う』って言って欲しくて、張り切っていたのはほんの数時間前。
嬉しいはずのその言葉は、素直に受け入れられずにいた。
こんな状況じゃなければ、すんなりと喜べただろうに。

理玖は、さっきの先生の言葉をどう捉えてるだろう。
単なるからかいだと思っていて欲しい……。


「……ね、結衣。帯の締め付けが苦しいんだ。あたし、もう着替えてくるね」


「えー、もう? せっかく着たのにぃ」


「さっきから息苦しくて。
結衣はコウタくんと文化祭をまわっておいでよ」


ね? と言うと、結衣がちらりとコウタくんを見た。


「んー。じゃあ、そうしよう、かな」


「じゃあ、あたしは茶道室で休憩してるね! あたしのことは気にしないでいいから、ゆっくりしてなよ」


結衣とコウタくんにそう言って、理玖たちにも軽く頭を下げてから教室を出た。

それから逃げるようにしてその場を離れた。


胸が痛い。


早く、誰もいないところに行って落ち着きたかった。

人ごみをすり抜けて、茶道室に戻った時には息は切れていた。