『ゴメンな』

『え?』

『腕、痛くないか?』

腕?

『強く掴んでしまったから、あざ、できてないか?』

『大丈夫です。私の方こそ、教えてくれてありがとうございました』

『大丈夫ならよかった。ところで君は、空師を知ってるんだな。知らない人が多いから少し驚いた。しかも祖父ちゃんのことも知ってたとは』

『父です。父に確認してくれって言われたんです。お祖父さんは伝説の空師だって、大迫さんのことも、トップクラスの空師だって興奮してました』

『参ったな。恥ずかしいよ』

彼の照れている表情を想像して笑みが溢れた。

『高ノ宮さんは家族で別荘に来てるのか?』

高ノ宮さんと言われ、突然距離が遠くなった感じがした。

『いいえ、私一人です』

『え⁉︎一人って、大丈夫なのか?そこら辺、今は誰もいないだろ。夜は暗いし物騒だ。怖くないのか?』

『大丈夫です。耳が聞こえなくなっていく恐怖に比べたら全然』

私は送信ボタンを押してすぐに後悔した。初対面の人間にこんなことを言われても困るだろうに。

『生まれつきじゃないのか?』

『はい』

『それは怖かったな。俺なんかが想像できないくらいの恐怖だっただろ』

彼のこのメッセージを見た瞬間、胸の辺りが急激に熱くなり、目頭も熱くなった。早く何か返さなきゃ彼が困ってしまうのに、涙で文字が滲む。やっとの思いで指を動かした。