比較的背の高い私が、顔を見上げるほどの背丈。目鼻立ちがはっきりとしていて、整ったパーツを持つ彼は、所謂イケメンといわれる顔なのではないのだろうか。端正な顔立ちという言葉がよく似合う。
鍵を渡してくれた手も、大きくて骨ばったゴツゴツとした指がとてもたくましかった。

彼があの大きな木に登っていく姿を近くで見てみたいと思った。

私は父にメッセージを送る。
空師と聞いてきっと驚くだろうなと想像した。

『別荘の大きなクスノキだけど、空師の人が剪定した方がいいって言ってたよ。剪定する時は連絡するように言われたんだけど、頼んでもいい?』

『何!空師!空師に会ったのか⁉︎』

想像通りのリアクションに思わず吹き出した。

『名前は?名前は聞いたか?』

『うん。大迫駿さんて言ってた』

『大迫駿!』

『うん』

『大迫緑苑って言ってたか?』

『言ってない。大迫駿って名前だけ』

『そうか、彼以外に大迫っていう空師には会ったか?』

『会ってないよ』

『美咲(みさき)彼にお祖父さんがいるか聞けるか?』

『うん、聞けるよ。聞いてみようか?』

『ああ、頼む。それから、大迫緑苑の大迫さんか確認してくれ』

『うん、わかった』

今度は彼にメッセージを送る。

『鍵を届けてもらった者です。今日はありがとうございました。お伺いしたいのですが、大迫さんは、大迫緑苑の大迫さんですか?大迫さんにはお祖父さんがいらっしゃいますか?突然すみません』

送信を押す手が緊張していた。
メッセージをちゃんと見てくれるだろうか。見てくれたとして、こんな事情聴取みたいなことをされて嫌じゃないだろうかと躊躇しながら送信ボタンを押した。