フランスから帰国すると、テレビで翔の話題が取り上げられていた。
『日本初の世界王者』として。
更には、イケメンなプロライダーとして一気に注目が集まり、連日エンタメニュースのトップになっている。

翔パパのお店にも連日取材カメラが押し寄せていて、時の人になりつつある。
私なんかとは住む世界が違う人。
前から分かってはいたけど、漸く実感した。

翔からは毎日のようにメールや電話は来るけど、何だろう?
前と少し違う感じがする、住む次元が違うから?

ううん、違う。
彼が言った『好きな人がいる』が引っかかるからだ。
その人のためにきっと努力しただろうし、怪我をしても支えになったんだろうし。
私なんて傍にいてあげれなかったし、何もしてあげれなかった。

だから、私から何かを彼に求めるのが間違いなんだと気付かされた。
もっと早くに『好き』って伝えておけばよかった。

***

十一月下旬に行われた全日本モトクロス選手権シリーズの最終戦でも一位を獲得し、十一連覇を果たした。
前人未踏のこの偉業を各局が報道しないはずがない。
再び連日の取材で、翔との距離が更に開いた気がした。
歩いて二分の家に住んでいるのに、行き来するのも躊躇う距離。

イケメンなライダーとして注目を浴びている彼の恋話が話題になるのも当然で。
私が翔の家に駆けつけれないのもその理由の一つ。
彼の経歴に汚点を残さないためにも……。

気付けは、あっという間に年末になろうとしていた。