(MXGPシリーズ、最終戦、フランスにて)

レーシングチームのある地元フランスにて第二十戦となる最終戦が行われる。
翔パパと一緒に翔の勇姿を見届けるため現地入りした私たちは、チームテントへと顔を出す。
翔はウォーミングアップのため不在だったが、チームの熱気は想像を遥かに超えていた。
現在、一位から四位までチームメンバーが争っていて、七位と九位もチームメンバーらしい。
さすがにここまで上位を占めてると、迫力が違うのも頷ける。

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開始を知らせるカウントダウンが始まり一斉に選手達がアクセルを全開にすると、地鳴りのようなエンジン音が体に伝わる。
そして、スタートの合図と共にホールショット(第一コーナーに到達すること)目掛けてフル加速する。

ジャンプスポットではウィップと呼ばれる車体が地面と平行になるようにジャンプをしたり、スクラブ(更に斜面を利用して車体の向きが変化するもの)を巧み繰り出す選手たち。
それを観客たちは声援を飛ばしつつ、その繰り出される技の数々に魅了されてゆく。

「あっ、誰か転倒したぞッ」

翔パパの声でコース内に視線を送るが誰が転倒したのか分からない。
翔でないことをただただ祈るばかり。
テント内のスタッフが慌て始めた。
双眼鏡でレースを見ている翔パパがスタッフに場所を指示している。

『お願いっ!翔じゃありませんように……』